いろいろなお菓子を作っていますが、戻ってくるのは、
やっぱりこんなシンプルなクッキーかもしれません。
飾らない、気取らない。でも、一枚口に含めば、
バニラの甘い香りがふわりと鼻を抜け、ざわついていた心が静かに凪いでいく。
そんな「お守り」のようなお菓子です。
米粉で焼くこのクッキーは、驚くほど純粋な味がします。
小麦粉のような独特の主張がない分、バターのミルク感やバニラビーンズの贅沢な香りが、ストレートに伝わってくるんです。口の中で「さらさら」と砂のように解けていく感覚は、まるで魔法のよう。
この繊細な口どけを一番感じてほしいから、あえて余計なものは何も入れず、素材の良さだけで勝負します。
私のこだわりは、バニラビーンズを贅沢に使うこと。
サヤを割って、中の黒い粒々をナイフでこそげ落とす瞬間、部屋中が甘い多幸感に包まれます。
生地を棒状にまとめて冷蔵庫でゆっくり休ませ、等間隔に包丁でカットしていく。
この規則正しい作業をしていると、
日々の忙しさでバラバラになっていた自分のリズムが、少しずつ整っていくのを感じます。
オーブンの中で、クッキーのふちがほんのり色づいてきたら焼き上がりの合図。
天板の上で冷ましている間の「パチパチ」という小さな音を聞きながら、丁寧にお茶を淹れます。
焼き上がったクッキーを一枚、お気に入りの器にのせて。
サクッと噛んだ瞬間に広がるお米の優しい甘みとバニラの余韻に、
今日も「お疲れ様」と自分に声をかけてあげたくなります。
お菓子作りは、私にとって自分を慈しむ時間、自分をととのえる時間。